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2025年6月25日

きょうのKeril #6 〜「映画館で観るべき」ってなんだろう〜

みなさん、こんにちは。
きょうのKerilは宮谷が担当します。

皆さんは、映画館に映画を観に行く機会はありますか?
私は、元々は家で映画を観るのが好きなタイプだったのですが
5年前から映画好きの友人のおかげもあって映画館に行く習慣ができて
最新の映画情報はなるべく目を通し、気になるものがあれば
積極的に劇場に足を運ぶようにしています。

先日、大ヒット上映中の李相日監督作品『国宝』を観に行きました。
『国宝』は同タイトルの書籍を映画化したもので
原作者である吉田修一氏は3年間、歌舞伎の黒衣
(演者を支えるために小道具の準備や衣裳の着替えを手伝う役職)として
楽屋に入った経験をもとに、原作を書き上げたといいます。
歌舞伎という奥深い世界に、一人の芸者の数奇な人生を壮大に描くストーリー。
その凄みは、出演者の一人である名優・渡辺謙氏に「こりゃ映像化は無理だ」と言わせるほど。
そんな多くのハードルを超えて挑戦したのが、李相日監督でした。

李相日監督といえば、『フラガール』や『悪人』、『怒り』など
数々の話題作品を生み出すヒットメイカー的存在。
(私は加瀬亮主演の『スクラップ・ヘブン』がとても好きでした。)
期待を胸に劇場に足を運びましたが、ひと言で言うならば
映画館の大きなスクリーンで観ることができて本当に良かったと思える作品でした。

任侠の子として生まれ、歌舞伎の道へ進む主人公・喜久雄の激動の人生を通して見る
常軌を逸した先にある美と芸を掴むための、鍛錬に次ぐ鍛錬
例え全てを失ったとしても、本能が踊り続ける限り、続けるしかないという一本道…
芸事を極めるとは何か、をまざまざと見せつける圧巻の3時間でした。


よく「映画館で観るべき作品」と言うと
「映画館で観ることを推奨されるものは、本当に良い映画作品とはいえない」
という言葉が返ってきます。

IMAXやドルビー・シネマといった通常の映画よりも迫力を増した映画体験もできるようになったことで
その論は激化し、最近では、『国宝』と同様に映画化が難しいと言われ
過去に数度も挫折を繰り返されてきたSF映画『DUNE』が公開された際にも
「IMAXで観るべき派」と「IMAXで観なければいけない作品なら評価できない」
という意見で大きく分かれていました。

大元は「〇〇すべき」という強い表現に対するカウンターで生まれた意見だとも思うのですが
確かに、IMAXやドルビー・シネマで見る映画はアトラクション体験に近くて
エベレスト級の山を登る、怪獣と怪獣が戦う、宇宙に行く、遭難するなどの題材は
ストーリーよりも絶景さや効果音に圧倒される部分も多いです。

しかし、それらを含めて、普段の生活からすればありえないことや人力を超えた世界を
いかにリアルな体験として、人の手で生み出して提供できるか…という“挑戦”とすれば
見事な結果だと思います。
映画館という環境を狙った巧みな表現、という点も、その制作陣の狙いと努力の結晶ですよね。

家でゆったり観ることも、映画館に足を運ぶことも好きな私からして
場所において映画の優劣はないと思っています。
ただ、映画館でしか得られない体験は確実にある。

スマートフォンの電源をオフにして、他者との会話も慎んで
ただただ目の前に繰り広げられるストーリーに向き合う。
そんな映画館という環境だからこその集中とのめり込みは、この上ない没入感を与えてくれるものです。

そして、大きなスクリーンによって演者・制作者による細やかな演出、描写が飛び込んでくることで
より作品への理解を深めたり、新しい景色が見えたりするのも映画館ならではの体験だと思います。

映画『国宝』には、主人公と親友的存在の2名が向き合って
化粧の過程で目尻に赤を入れる“目張り”を施すシーンがあります。
そこでは互いの顔がアップに映り
かたや大きく開かれた瞳が小刻みに揺れて恐怖に飲み込まれる様が
かたや優しい眼差しから驚き、じんわりと涙を作り、浮かべる様が映ります。
一瞬のうちに起きた変化と美しさと、音もなく歯車がずれていく瞬間。
ストーリーにも関わる大切なシーンなのですが、全体的にはあまり間をとらない映画だったからこそ
その一間にこんなにも美しいこだわりが詰まっているとは…と驚いたところも。
こうした演者・制作者のこだわりが伝わりやすくなった、というのは
観る側にとっても、提供する側にとっても嬉しいことだなと思います。


Kerilでは、映像や音楽、言葉を扱うコンテンツも多数制作・提供していますが
人々のニーズやトレンドというものをもちろん取り入れながらも
たとえ小さく一目では見つけてもらえないようなものであったとしても
一切妥協しない、したくない…というスタンスでいます。
そうした小さな小さなこだわりと愛たちが、多くの人に届くことを願って。
その人たちの新しい輝きになるように願って。
挑戦とこだわることを忘れずに、日々ものづくりに励みたいなと改めて思った日でした。

映画のことに関係するような、関係しないような…
とりとめのないお話になってしまいましたが、『国宝』観られた方はぜひ感想待ってます(笑)